キーワード解説
採用通知書
採用通知書とは、求人企業が応募者へ採用の決定について知らせる文書のことです。
採用通知書は法的に定められた労働条件通知書とは異なり、企業に発行する義務はありません。
採用通知書を発行するのは、複数の求人に応募している応募者に採用の結果をスピーディに通知することで、人材が他社に流れることを防ぐ狙いがあります。
採用通知書に出社日や労働条件などが明示されていれば、採用確定の意思表示と認められます。
求人企業側の一方的な採用の意思を通知するものであり、応募者側の入社の意思を確認したものではなく、拘束力はありません。
採用通知に入社承諾書を同封して、提出期限までに返送されない場合には、採用が取り消されるということもあります。
採用通知そのものは電話で行われることもありますが、入社するときに提出が必要となる書類が多いため、採用通知書に必要な書類を記載して、事前に提出することを求められる場合もあります。
新卒の場合は、採用通知をして応募者の入社の意思を確認してから、内定通知をするのが一般的な流れです。
新卒は採用が決まってから、入社までの期間が長いので、労働条件の確認や入社前研修などのため、事前に出社日が設けられていることがほとんどです。
採用通知は、面接後の1週間から10日程度が目安とされてはいますが、応募人数などによって通知期間には幅があります。
通常は、面接のときに次の連絡について伝えられます。
不採用通知
応募者が多い企業などでは、採用者のみに結果が通知されることもあります。
連絡がなければ、不採用ということになりますが、一般的には不採用となっても、メールや電話、郵送などで通知されます。
不採用の通知は、採用の通知より優先順位が下がりますので、通知されるのは遅い可能性があります。
1ヵ月以内に何からの連絡がない場合には、不採用の可能性が高いと考えられます。
不採用となった場合、通知と併せて応募書類が返却されることがあります。
不採用となった応募者の書類について、企業には返却の法的義務はありませんが、採用活動で得た個人情報は、採用選考の目的以外に利用できませんので、返却されなければ、廃棄されます。
入社の意思表示
採用通知書に入社の意思確認について記載がありますので、その記載内容に従って、採用を受諾するかどうかの回答をします。
入社承諾書や誓約書の提出を求めて、入社の意思を確定している企業もあります。
入社の意思表示に期限が設けられる場合、その期限までに特別な理由もなく回答をしないでいると、採用が取り消される可能性があります。
複数の求人に応募していて、結果待ちの状態であっても保留のままにしておくのではなく、待ってもらいたい場合にはその旨を連絡しましょう。
採用の取り消し・辞退
採用を受諾すると入社するまでは内定期間となります。
内定は契約を解約する権利が企業側に留保されている労働契約とであるとされています。
内定の取り消しは、留保された解約権の行使ということになりますので、客観的に合理的な理由と社会通念上相当と認められるものに限られます。
内定の取り消しの可否は、採用通知書や応募者から提出された書類などに記載された内容を基準に判断されます。
一方、内定者からの採用辞退は、労働契約の解約が2週間前までであればいつでも自由にできることから、入社する2週間前までは自由にできると考えられています。
採用内定による労働契約
【労働契約が成立しているとされた事例】
企業Aから採用内定通知を受けたXは、①他の企業の求人に対する応募を辞退し、企業Aの求めに応じて、②入社誓約書を提出し、③近況報告を行った。また企業Aでは同採用内定通知のほかに労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかった。このことから、同採用内定通知により両者の間に労働契約が成立したものと判断された。
【労働契約が成立していないとされた事例】
Yは企業Bから採用内定通知を受けたが、①企業BはYの入社に向けた手続きは行わず、Yも、②入社の誓約をせず、③受け取った採用内定が正式なものではなく、企業Bから入社を翻意される可能性があることを認識していた。このことから、企業Bは、Yに対して確定的な採用の意思表示をしたとはいえず、同採用内定通知によって労働契約は成立していないと判断された。
厚生労働省「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件の明示について」より
入社するときに求められる書類
入社するときには、業務に誠実に従事することを約束する「誓約書」や不正があったときなどの損害賠償の保証人を明記した「身元保証書」の提出を求められることがあります。
- 誓約書
- 身元保証書
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 給与振込先銀行口座
- マイナンバー など
必要書類の提出拒否
転職者の誓約書には秘密保持義務を負う特定の情報について確認する内容が含まれる場合があります。
秘密保持誓約書の提出が業務遂行上、必要不可欠と認められる場合には、誓約書を提出しないことを理由として、採用取り消し(解雇)となる可能性があります。
不合理な内容の誓約書は無効となりますので、合意が難しい内容があれば、まずは企業に説明を求めましょう。
個人情報の再利用制限
応募者の個人情報は応募書類だけでなく、データベース化された連絡先、選考での評価も対象となります。
利用する目的がなくなった個人情報については、遅滞なく消去するよう努めなければならないことになっています。(個人情報保護法)
不採用者に対して追加募集するような可能性があっても、当初の利用目的とは異なるため、再利用は認められないと考えられています。
- 履歴書・職務経歴書
- 連絡先などデータベース化されたもの
- 面接などで得た情報
- 採用選考での評価 など
参考:厚生労働省ウェブサイト