外食業界には営業手法によりさまざまな業態があります。
転職・就職で押さえておきたいファストフード・ファミレス・カフェ業界の概要と動向についてご紹介します。
外食産業とは
外食業界とは、家庭外で飲食のサービスを提供する事業のことです。外食業界は、主に営業手法による業態で分類されます。
多様化する顧客ニーズに合わせて、外食業界の業態はひとつの業態からさらに細分化しています。コロナ禍で業態転換や新業態の育成などの動きが見られるようになりました。
飲食店のなかでもチェーン展開する大手は外食産業と呼ばれています。
- ファストフード
- レストラン・ファミリーレストラン
- すし店
- 麺類
- 居酒屋
- カフェ・コーヒーチェーン など
ファストフード
ファストフードは店内で最終加工した商品をカウンターなどで販売し、基本的に配膳はしません。
店舗数が最も多く、ハンバーガーチェーンなどの洋風ファストフードと牛丼・回転ずしチェーンなどの和風ファストフードに分かれます。
外食業界全体は縮小傾向ですが、ファストフードは市場規模を維持しています。
持ち帰りや宅配が拡大し、コンビニエンスストアや持ち帰り弁当店など中食との顧客獲得競争が激化しています。
日本マクドナルドホールディングス
ハンバーガーチェーン。
圧倒的なシェアと売上を誇っています。
コロナ禍でも「モバイルオーダー」や「マックデリバリー」で需要を取り込み、業績は好調を維持しています。
- 売上高:3,523億円
- 従業員数:2,475人
- 店舗数:2,967店
日本KFCホールディングス
「ケンタッキーフライドチキン」をフランチャイズ中心に運営。
マーケディング改革で客数を大幅に伸ばしています。
- 売上高:3,523億円
- 従業員数:907人
- 平均年齢:45歳
- 店舗数:1,197店
ゼンショーホールディングス
業界最大手。
牛丼の「すき家」から始まり、ファミリーレストランの「ココス」「ジョリーパスタ」など事業を拡大させてきました。
- 売上高:2,621億円
- 従業員数:13,567人
- 平均年齢:39歳
- 店舗数:3,100店(牛丼カテゴリー)
吉野家ホールディングス
牛丼2位。
牛丼の「吉野家」のほか、うどんの「はなまる」を展開し、海外店舗も多数あります。
- 売上高:1,127億円
- 従業員数:2,851人
- 平均年齢:49歳
- 店舗数:1,197店(吉野家)
松屋フーズホールディングス
牛丼3位。
「松屋」は牛丼だけでなく、定食も豊富です。
とんかつの「松のや」の出店を加速しています。
- 売上高:1,065億円
- 従業員数:1,725人
- 平均年齢:48歳
- 店舗数:1,210店
壱番屋
カレー店大手。
「CoCo壱番屋」を全国展開しています。
- 売上高:482億円
- 従業員数:1,169人
- 平均年齢:43歳
- 店舗数:1,455店
アークランドサービスホールディングス
かつ丼首位。
とんかつ店「かつや」を運営しています。
- 売上高:471億円
- 従業員数:519人
- 平均年齢:36歳
- 店舗数:764店
ファミリーレストラン
ファミリーレストランは総合的な品ぞろえの料理を提供する業態です。
洋食と和食を主体とした業態だけでなく、特定地域料理を扱うチェーンもあります。
外食需要は戻りつつありますが、原材料高や人件費の上昇などへの対応が課題となっています。
人手不足対策に営業時間の見直しが進んでいます。
すかいらーくホールディングス
ファミレス最大手。
「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを運営しています。
- 売上高:3,037億円
- 従業員数:5,804人
- 平均年齢:43歳
- 店舗数:2,988店
サイゼリヤ
低価格イタリアン「サイゼリヤ」を展開。
国内とオーストラリアの自社工場で食材を生産しています。
- 売上高:1,442億円
- 従業員数:3,939人
- 平均年齢:40歳
- 店舗数:1,543店
ロイヤルホールディングス
ファミレスの老舗。
「ロイヤルホスト」を中心に「てんや」「シズラー」「シェイキーズ」など多彩に展開しています。
- 売上高:528億円
- 従業員数:1,875人
- 平均年齢:48歳
- 店舗数:465店
ジョイフル
低価格ファミレス。
郊外型レストラン「ジョイフル」を運営しています。
- 売上高:466億円
- 従業員数:1,124人
- 平均年齢:44歳
- 店舗数:563店
ファミレス大手
- セブン&アイ・フードシステムズ:「デニーズ」など
- アレフ:「びっくりドンキー」など
- SRSホールディングス:「和食さと」など
麺類
麺類は大きく和風と中華の業態に分かれます。
処遇改善に力を入れる動きが目立つようになっています。
トリドールホールディングス
セルフ式うどん「丸亀製麺」が主力。
海外展開にも積極的です。
- 売上高:1,883億円
- 従業員数:5,795人
- 平均年齢:39歳
- 店舗数:1,770店
リンガーハット
長崎ちゃんぽん「リンガーハット」を全国展開。
- 売上高:301億円
- 従業員数:548人
- 平均年齢:46歳
- 店舗数:664店
王将フードサービス
「餃子の王将」を展開。
持ち帰りやデリバリーを強化しています。
- 売上高:930億円
- 従業員数:2,254人
- 平均年齢:37歳
- 店舗数:732店
ハイデイ日高
低価格の中華食堂「日高屋」が主力。
- 売上高:381億円
- 従業員数:853人
- 平均年齢:36歳
- 店舗数:440店
幸楽苑ホールディングス
中華そば「幸楽苑」を直営展開。
- 売上高:254億円
- 従業員数:521人
- 平均年齢:45歳
- 店舗数:431店
カフェ・コーヒーチェーン
コーヒーチェーンは喫茶店やカフェをチェーン運営し、店内でコーヒーやサンドイッチなどの軽食を提供します。
スターバックスをはじめとして、外資系のコーヒーショップが相次いで誕生しました。
コンビニエンスストアが低価格の入れたてコーヒーを強化し、顧客の奪い合いが激化。
コーヒーチェーンはコーヒー豆の選定などサービス力を高めて成長を目指しています。
スターバックスコーヒージャパン
国内カフェの売上トップ。
- 売上高:2,539億円
- 従業員数:5,173人
- 店舗数:1,811店
ドトール・日レスホールディングス
カフェの老舗。
「ドトールコーヒー」「エクセルシオールカフェ」「星乃珈琲店」
- 売上高:1,268億円
- 従業員数:2,767人
- 平均年齢:40歳
- 店舗数:2,013店
タリーズコーヒージャパン
伊藤園グループ。
「ダリーズコーヒー」を展開しています。
- 売上高:354億円
- 従業員数:959人
- 店舗数:766店
サンマルクホールディングス
「サンマルクカフェ」「倉敷珈琲店」
カフェのほかにレストランも展開しています。
- 売上高:244億円
- 従業員数:827人
- 平均年齢:41歳
- 店舗数:395店(カフェ)
コメダホールディングス
名古屋地盤。「コメダ珈琲」
- 売上高:378億円
- 従業員数:548人
- 平均年齢:49歳
- 店舗数:968店
外食産業の業務
外食産業は店舗から本部まで幅広い業務で成り立っています。
社内FC制度
社員からFC加盟店オーナーを募集する制度です。
経営者意識の高い社員を育成する人事制度として導入されています。
外食産業の職務
- 店舗開発
出店市場調査、店舗物件発掘、店舗設計、リニューアルなど - 商品開発
食材の安定供給先開発、食材の調理、加工法の研究、メニュー開発など - 食材調達
食材の物流とコストの研究、食材管理法の研究、食材別の管理、環境対策など - 営業・店舗管理
チェーン店の運営指導、競合店対策、FC展開の企画や管理、従業員の研修など - 店舗運営
店舗の運営管理、食品衛生管理、従業員の勤務管理、接客指導、売上管理、利益管理など
外食産業の職種
外食産業では本部と店舗でさまざまな職種が重要な役割を担っています。
店長
担当する飲食店のトップです。
店の利益目標達成のために店舗運営に関わるあらゆる業務を行います。
販売計画、予算の作成と実行、販促計画、環境対策、店員の勤務管理と教育、クレーム対応、衛生・防火・防災・防犯などがあります。
店長には接客はもちろん、店員と信頼関係を構築できるコミュニケーション力やリーダーシップ、数字に強いことも求められます。
SV(スーパーバイザー)
SVとは本部に籍を置き、担当する店舗の巡回・管理・監督を行う店舗巡回指導員のことです。
店長やオーナーに本部の指示や情報を伝え、店舗運営や人材育成など店長の相談にのり、必要な助言や支援をします。
SVには高いコミュニケーション力が必要となり、本部と店長両者に信頼され、公平な立場で情報提供することが求められます。
指導は一方的とならないよう相手の話に真剣に耳を傾ける傾聴力も大切です。
バイヤー
バイヤーの仕事は、大きく食材調達計画を立てる、食材仕入れ、食材管理の3つに分けられます。
仕入れるだけでなく、新たな食材の発見と開発、粗利益高に対する数値責任を持つことも求められます。
商品知識や仕入先・産地に関する詳しい情報も欠かせません。
バイヤーには市場の動向を知るためのフットワークの軽さや情報収集力、取捨選択する能力が求められます。
売り手との交渉力や信頼関係を築く力も重要です。
店舗・メニュー開発
店舗開発の仕事は企画関連業務(出店計画やマーケティング調査を行うこと)と不動産物件関連業務(店舗物件取得や店舗設計を行うこと)に大きく分けられます。
交渉と調整力が求められます。
外食産業では季節や年間行事に合わせて、常に新しいメニュー開発に取り組んでいます。
メニュー開発担当者は、メニュー開発の目的や開発方針を把握して、調理の効率性や材料の原価率、客層、価格設定などを考えます。
市場動向や消費者のニーズを敏感にくみとり、メニューに反映して、売上につなげることが求められます。
外食産業の採用市場
外食業界は全体として人手不足の傾向が続いています。
正社員以外のアルバイトなどパートタイマーが占める割合は他産業より高く、従業員の定着率が低いことが指摘されています。
業界では労働条件の改善や人材育成に積極的に取り組み、人材確保に動き出しています。
飲食店の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 42.1歳 (平均) |
所定内労働時間 | 167時間 | 172時間 | 171時間 |
残業 | 12時間 | 14時間 | 14時間 |
月収 | 228,300円 | 260,100円 | 290,100円 |
年間賞与等 | 114,700円 | 250,200円 | 324,300円 |
年収 | 2,854,300円 | 3,371,400円 | 3,805,500円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
外食産業の転職活動
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- キャリアの可能性を広げるカウンセリング
- 自分だけでは見つけられない求人紹介
- 企業との調整・交渉代行 など
まとめ
外食需要は戻ってきましたが、ファストフード・ファミレス・カフェ各社は原価高騰や人手不足のなかで、どのように乗り越えていくかが課題となります。
人手不足の対策としては、パート・アルバイトから正規雇用(地域限定正社員など)に移行する人事制度を導入したり、研修教育を充実させるなど、定着率改善に向けて、積極的な取り組みを行っています。
【参考】
・一般社団法人日本フードサービス協会
・一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会
・各企業公式サイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』