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医薬品・製薬会社の業界研究【概要・動向】

医薬品の世界市場は、巨大で今後も拡大が見込まれる成長産業です。

国内の医薬品・製薬会社は、薬価改定などの影響で厳しい環境が続いています。

各社は新薬開発への選択と集中を進めています。

治療薬やワクチン開発の取り組みも進んでいますが、毎年の薬価引き下げで国内市場としては緩やかな縮小傾向が続くと見られています。

転職・就職で押さえておきたい医薬品業界の概要と動向をご紹介します。

医薬品業界

医薬品には、医師が処方する「医療用医薬品」と薬局などで購入できる「一般用医薬品」などがあります。

新薬(先発医薬品)の特許が切れると、同じ成分の「後発医薬品(ジェネリック)」が出回ります。

世界の主要メーカーでは、特許で保護された製品を独占販売することで高い収益を確保しています。

国内市場では、これまで高収益を支えてきた先発医薬品の特許切れなどにより、後発医薬品が急速に普及し、市場縮小の傾向が続いています。

世界の製薬会社

  1. ファイザー(米)
  2. アッヴィ(米)
  3. ジョンソン・エンド・ジョンソン(米)
  4. ノバルティス(スイス)
  5. ロシュ(スイス)
  6. ブリストル・マイヤーズスクイブ(米)
  7. サノフィ(仏)
  8. メルク(米)
  9. グラクソ・スミスクライン(英)
  10. アストラゼネカ(英)

日本の医薬品メーカー

欧州・米国など世界市場は成長していますが、国内では医療費抑制政策、薬価改正の影響が大きく、市場は縮小傾向です。

国内大手は新薬開発を急いでいます。

武田薬品工業

国内首位の製薬会社。

シェイアー(アイルランド)と経営統合し、メガファーマ(巨大製薬企業)入りを果たしました。

  • 設立:1925年1月29日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:47,347人
  • 平均年齢:42歳

アステラス製薬

国内2位の製薬会社。

がん領域を拡大し、積極的な海外進出に取り組んでいます。

  • 創業:1923年
  • 本社:東京都
  • 従業員数:14,522人
  • 平均年齢:42歳

第一三共

国内3位の製薬会社。

循環器領域からがん領域に開発重点をシフトしています。

  • 設立:2005年9月28日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:16,458人
  • 平均年齢:44歳

中外製薬

ロシュ傘下の製薬会社。

バイオ医薬品の開発力の高さに強みがあります。

  • 設立:1943年3月8日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:7,664人
  • 平均年齢:43歳

エーザイ

アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」でグローバル企業に成長。

メルク(米)と抗がん剤で大型提携しました。

  • 設立:1941年12月6日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:11,322人
  • 平均年齢:43歳

大塚ホールディングス

新薬の開発に注力。

食品や飲料事業でも広く認知されています。

  • 設立:2008年7月8日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:33,226人
  • 平均年齢:44歳

住友ファーマ(旧大日本住友製薬)

住友化学傘下の製薬会社。

がんや再生医療に重点を置いています。

  • 設立:1897年5月14日
  • 本社:大阪府、東京都
  • 従業員数:6,987人
  • 平均年齢:43歳

小野薬品工業

がん免疫薬「オプジーボ」が主力。

次の成長につなげる新薬開発に力を入れています。

  • 設立:1947年
  • 本社:大阪府
  • 従業員数:3,687人

田辺三菱製薬

三菱ケミカルホールディングスの完全子会社化で上場廃止。

抗リウマチ薬が主力です。

  • 設立:1933年12月13日
  • 本社:大阪府
  • 従業員数:6,697人

協和キリン

キリンホールディングス傘下。

抗体薬に強みがあります。

  • 設立:1949年7月1日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:5,752人
  • 平均年齢:43歳

塩野義製薬

抗生物質に強み。

新型コロナワクチンや治療薬を開発しています。

  • 設立:1919年6月5日
  • 本社:大阪府
  • 従業員数:5,693人
  • 平均年齢:41歳

一般用医薬品

  • 大正製薬ホールディングス:大衆薬の国内最大手
  • ロート製薬:一般用目薬で世界首位
  • ゼリア新薬工業:滋養強壮剤など
  • 興和:多角経営のひとつとして医薬品

後発医薬品

特許が切れた医療用医薬品の成分をそのまま使った医薬品を後発医薬品(ジェネリック)と呼びます。

成分や性能は同じですが、研究開発の費用を抑えられるため先発医薬品より低価格で販売されています。

医療費抑制策の一環として後発薬の普及が進められ、普及率は70%を超えました。

医療現場では先発薬から後発薬への置き換えが進み、市場は成長を続けています。

薬価改定により単価が引き下げられたことから、販売数量が増える一方で、収益率は低下しています。

品質管理の不正問題から、業界再編・統合の可能性があります。

サワイグループホールディングス

沢井製薬は日医工の品質不正で後発薬首位に。

米国の大型後発薬企業を買収しました。

  • 設立:2021年4月1日
  • 本社:大阪府
  • 従業員数:2,381人
  • 平均年齢:44歳

日医工

投資ファンドと医薬品卸メディパルHD出資会社の子会社へ。

品質不正で業績が悪化し、上場を廃止する見通しとなっています。

  • 設立:1965年7月15日
  • 本社:富山県
  • 従業員数:2,719人
  • 平均年齢:40歳

東和薬品

卸を通さない直販体制を軸に売上を拡大。

循環器系に強みがあります。

  • 設立:1957年4月
  • 本社:大阪府
  • 従業員数:4,078人
  • 平均年齢:37歳

Meiji Seikaファルマ

明治ホールディングス傘下の医療用専業の医薬品メーカー。

新薬と後発薬の両方を取り扱っています。

  • 設立:1916年10月9日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:5,655人
  • 平均年齢:41歳

バイオ医療

遺伝子組み換えや細胞培養などのバイオ技術を活用して生み出された医薬品をバイオ医薬品といいます。

世界の医薬品売上上位の半数近くをバイオ医薬品が占め、大幅に増加しています。

国内でもベンチャー企業と製薬大手の提携が活発化しています。

法律改正に伴い、再生医療や細胞医療は実用化の加速が見込まれます。

タカラバイオ

バイオ研究支援大手。

遺伝子治療薬の自社開発を進めています。

  • 設立:2002年4月1日
  • 本社:滋賀県
  • 従業員数:1,666人
  • 平均年齢:40歳

ペプチドリーム

特殊なペプチドを用いた独自の創薬技術。

製薬大手と共同研究を進めています。

  • 設立:2006年7月
  • 本社:神奈川県
  • 従業員数:196人

そーせいグループ

新薬候補の化合物を多数保有しています。

  • 設立:1990年6月22日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:198人
  • 平均年齢:45歳

国内バイオ企業

  • リプロセル
  • メディシノバ
  • リボミック
  • アンジェス
  • サンバイオ

再生医療

病気やケガで機能しなくなった組織や臓器と置き換えるための再生医療。

再生医療製品の実用化が加速し、研究の段階から産業化の段階に移りつつあります。

iPS細胞

  • 武田薬品工業
  • 第一三共
  • 住友ファーマ
  • 富士フイルムホールディングス
  • 協和キリン
  • ヘリオス

iPS以外の細胞

  • アステラス製薬
  • 中外製薬
  • テルモ
  • ニプロ
  • ロート製薬
  • JCRファーマ
  • サンバイオ

医薬品卸と小売り

医薬品は卸を通して医療機関や薬局、ドラッグストアなどに流通します。

医薬品の多くは、病院や保険薬局で提供される医療用医薬品です。

医薬品卸

医薬品卸は医薬品メーカーから仕入れた医薬品を販売する専門の流通業です。

MS(医薬品卸販売担当者)と呼ばれる営業職が商品の提案や販売を行います。

薬局

保険薬局は公的医療保険の適用となる薬局です。

保険調剤業務を主とする薬局を調剤薬局と呼んでいます。

薬局では処方せんに基づいて調剤する医療用医薬品や一般用医薬品を販売しています。

ドラッグストア

ドラッグストアでは一般用医薬品を中心に健康食品や化粧品・日用品を取り扱っています。

薬局を併設するドラッグストアが増えています。

医薬品製造業の売上高

順位企業名売上高
(百万円)
1武田薬品工業3,569,006
2アステラス製薬1,296,163
3第一三共1,044,892
4中外製薬999,759
5エーザイ756,226
6ファイザー736,640
7住友ファーマ560,035
8大塚製薬522,542
9小野薬品工業361,361
10協和キリン352,246
11アストラゼネカ348,343
12田辺三菱製薬340,643
13塩野義製薬335,138
14ヤンセンファーマ277,752
15MSD268,691
16参天製薬266,257
17ノバルティスファーマ248,372
18日本イーライリリー230,866
19バイエル薬品229,295
20グラクソ・スミスクライン215,760

医薬品卸売業の売上高

順位企業名売上高
(百万円)
1メディパルホールディングス(連結)3,290,921
2アルフレッサホールディングス(連結)2,585,643
3スズケン(連結)2,232,774
4東邦ホールディングス(連結1,266,171
1アルフレッサ2,089,300
2メディセオ1,725,092
3東邦薬品1,207,317
4アステム378,145
5ケーエスケー280,736
6大木276,207
7バイタルネット273,658
8アルフレッサヘルスケア244,822
9アトル202,807
10ほくやく177,248

(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)

製薬会社の主な組織

製薬会社の組織では、それぞれ専門性の高い業務を担っています。

研究開発部門

製品を開発する部門です。

研究開発部門は研究と開発に大別されます。

薬学系、理学系の大学院卒業レベルの人が多く採用されます。

  • 基礎研究
  • 臨床研究

生産部門

製品を製造する部門です。

生産部門では生産ラインの構築や品質管理を行います。

機械、工学、薬学系の人材が求められます。

  • 品質管理
  • 流通管理

営業部門

営業・販売活動を行う部門です。

営業活動だけでなく、MRと呼ばれる医療情報担当者が医薬品の情報提供・収集・伝達を行います。

医薬情報部門

医薬品情報を整理してまとめる部門です。

医薬品の有効性やMRが収集した副作用などの情報を整理し、次の開発につなげる役割があります。

海外部門

医薬品業界では、海外事業の拡大が成長の鍵になっています。

海外部門の重要性は高まり、担当者には優れたビジネスセンスが必要になっています。

製薬会社の資格・職種

医薬品業界では、高度な専門性が求められ、有資格者が活躍しています。

薬剤師

薬剤師は医薬品業界の代表的な資格で、製薬会社の研究開発やMRなどとしても活躍しています。

MR認定試験

MRは「Medical Representatives」の略で医薬情報担当者のことです。

MRとして認定されるには、公益財団法人MR認定センターが実施する試験に合格して、6ヵ月の実務経験が必要になります。

受験資格は製薬会社などで導入教育を受けるか、MR認定センターの基礎教育を受講して修了認定を受けることが必要です。

  • 基礎教育:医薬品情報、疾病と治療、医薬概論
  • 実務教育:技能・実地、製品知識

CRA(臨床開発モニター)

製薬会社の立場から医療機関で行われる治験が正しく行われているかどうかモニタリングします。

医薬品の知識が求められるので、薬剤師やMR、看護師、臨床検査技師などの資格や経験が活かせます。

CRC(治験コーディネーター)

医療機関の立場から治験が適切に行われているかをチェックします。

看護師や薬剤師などが担当することもあります。

医薬品業界の採用市場

MRの求人は落ち着いていますが、新薬開発などのタイミングで求人ニーズが高まる可能性があります。

研究職の求人ニーズは高い水準が続いています。

医薬品・製薬会社には外資系企業やグローバル企業が多く、エージェントサービスの利用が一般的になっています。

製薬会社の転職活動

エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したコンサルタントのサポートを受けることができます。

非公開・独自案件の求人紹介だけでなく、企業に応じた書類作成や面接対策のアドバイスなどで選考通過率のアップが期待できます。

薬剤師専門の転職エージェントおすすめを厳選
薬剤師の転職では専門エージェントの利用が一般的になっています。はじめての転職や第二新卒薬剤師も利用しやすい転職エージェントをご紹介します。
外資系・バイリンガル求人に強い転職エージェントおすすめを厳選
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医薬品製造(化学工業)の給与

区分20~24歳25~29歳43.0歳
(平均)
所定内労働時間164時間163時間163時間
残業14時間15時間12時間
月収238,900円290,300円385,000円
年間賞与等674,500円979,500円1,532,000円
年収3,541,300円4,463,100円6,152,000円

(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)

まとめ

医薬品業界ではグローバル大手企業を中心に業界再編が進んでいます。

求人ニーズはM&Aなどで大きく変動しますので、転職を検討するのであれば、業界の動向に精通した転職支援サービスを上手に活用して、チャンスを確実にすることをおすすめします。

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【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・日本製薬工業協会(JPMA)
・日本OTC医薬品協会(JSMI)
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』