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農業・農ビジネスの業界研究【概要・動向】

日本の農業は農家の高齢化や廃業など厳しい環境にあります。

農業人口が減るなか、ベンチャー企業など異業種や未経験からの新規参入など新しい動きが見られるようになっています。

転職・就職で押さえておきたい農業(農ビジネス)業界の概要と動向についてご紹介します。

農業業界の最新動向(2024年)

農業とは

農業とは、耕種農業、畜産農業および農業に直接関係するサービス業務を行う事業のことです。

国内の農業産出額は2010年を底にやや増加しています。

農作物の輸出額も増えています。

輸出の伸びが期待できることから、支援体制の整備が進められています。

農業に従事する人の減少と高齢化は進み、効率化に向けて人工知能(AI)やITを活用した「スマート農業」が拡大しています。

民間企業の参入も期待されています。

米作農業

米作農業は、主として米を栽培し、出荷する事業です。

米の消費量は減少傾向ですが、消費者の安全・安心志向に対応し、有機栽培や減化学肥料など特色を持たせたオリジナルブランド米が注目を集めています。

より品質の高い安全な売れる米作りを進める動きが出ています。

米作以外の耕作農業

米以外の穀物を栽培し、出荷する事業です。

穀物とは、米、麦類、雑穀、豆類などの乾燥子実をいいます。

野菜作農業

野菜作農業は、きのこ類の栽培を含む野菜を栽培し、出荷する事業です。

野菜は国内生産量が減少し、輸入量が増加しています。

野菜産地の改革や体制強化の取り組みが推進されています。

  • 低コスト化
  • 契約取引推進
  • 高付加価値化

果樹作農業

果樹作農業は、果樹を栽培し、出荷する事業です。

果物は付加価値の高い農業を展開していますが、国内需要は伸び悩んでいます。

国内の需要喚起と日本産ブランドの輸出を推進することが課題といえます。

畜産農業

畜産農業は乳製品を作る酪農とブタやニワトリなどの飼育、生産のことをいい、国内農業では最も大きい規模です。

高齢化や飼料価格の高騰などの影響を受けています。

農業協同組合(JA)

農業者によって組織された協同組合です。

組合員向けに総合的なサービスを提供しています。

農家のコスト削減や農産物流通の合理化のため、JA全農の改革が進められています。

経済事業(購買・販売)

JA全農は組合員が生産した農作物の販売、農業の生産に必要な肥料や農薬、農業機械などの供給を行います。

信用事業

JAバンクは営農指導や貯金、貸付、証券業などを行います。

中核は農林中央金庫です。

共済事業

JA共済は組合内での共済加入取りまとめを行います。

郵便窓口業務の受託なども行っていて、組合員の生活に密着した組織です。

米穀卸

米穀卸売業者は、全国の農家で収穫されたお米の精米・検査等を行い、販売店やスーパーなどに届けます。

神明ホールディングス

コメ卸最大手。

米飯加工事業も行っています。

  • 設立:1950年10月18日
  • 本社:兵庫県

木徳神糧

コメ卸大手。

飼料・海外事業を強化しています。

  • 設立:1950年
  • 本社:東京都
  • 売上高:1,047億円
  • 従業員数:389人

全農パールライス

米穀のとう精・販売。

炊飯事業、食品等の販売も行っています。

  • 設立:1972年10月9日
  • 本社:東京都
  • 売上高:1,028億円
  • 従業員数:717人

ヤマタネ

コメ卸大手。

倉庫・不動産業など事業は多岐にわたります。

  • 創業:1924年
  • 本社:東京都
  • 売上高:510億円
  • 従業員数:923人

種苗

農家の多くは生産性を上げるために品種改良された種を購入しています。

これらの種子や苗の開発、生産、販売などを行うのが種苗メーカーです。

種苗専門メーカーは寡占状態にあります。

サカタのタネ

野菜・花きの種子大手。

海外販売が7割を占めています。

  • 設立:1942年12月
  • 本社:神奈川県
  • 売上高:772億円
  • 従業員数:2,691人
  • 平均年齢:39歳

カネコ種苗

種苗の生産および販売。

野菜種苗を中心に園芸用品や農材販売も行っています。

  • 設立:1947年6月17日
  • 本社:群馬県
  • 売上高:621億円
  • 従業員数:656人
  • 平均年齢:42歳

タキイ種苗

野菜と花きでサカタのタネと2強。

海外展開も行っています。

  • 創立:1920年5月
  • 本社:京都府
  • 売上高:517億円
  • 従業員数:794人

肥料

肥料は農作物の収穫量の増大に欠かせません。

肥料には有機質肥料と化学肥料がありますが、日本で使われている肥料のほとんどは化学肥料です。

片倉コープアグリ

複合肥料を中心とした国内首位の肥料メーカー。

  • 設立:1920年3月14日
  • 本社:東京都
  • 売上高:510億円
  • 従業員数:846人
  • 平均年齢:46歳

多木化学

化学肥料。

幅広く業務を展開しています。

  • 創業:1885年3月
  • 本社:兵庫県
  • 売上高:358億円
  • 従業員数:599人
  • 平均年齢:45歳

日東エフシー

独立系の肥料メーカー。

農協向けに強みがあります。

  • 創立:1952年1月18日
  • 本社:愛知県
  • 従業員数:295人

農薬

農薬は農作物を病害虫の被害から守るために必要となります。

農作物の効率化や品質の維持、商品価値の向上などに大きな役割を果たしています。

農薬市場には農薬専業から総合化学メーカーまでさまざまな企業が参入しています。

住友化学

総合化学。

農薬の比率は低いですが、除草剤に強みがあります。

  • 設立:1925年6月1日
  • 本社:東京都、大阪府
  • 売上高:6,040億円
  • 従業員数:33,572人

日産化学

農業化学品等。

農薬や機能性材料、医薬品など多様な分野の事業を幅広く展開しています。

  • 創業:1887年
  • 本社:東京都
  • 売上高:2,280億円
  • 従業員数:2,965人
  • 平均年齢:40歳

日本農薬

農薬専業大手。

海外販売を強化しています。

  • 創立:1928年11月17日
  • 本社:東京都
  • 売上高:1,020億円
  • 従業員数:1,567人
  • 平均年齢:42歳

クミアイ化学工業

農薬の製造・販売。

農薬を中心に農業関連事業を行っています。

  • 創立:1949年6月20日
  • 本社:東京都
  • 売上高:1,453億円
  • 従業員数:1,832人
  • 平均年齢:40歳

農業関連企業

日本産の安全性や品質の支持が高まり、農業関連企業は海外市場にも目を向けています。

ホクト

きのこ生産トップ。

しめじ、エリンギのほか健康食品なども生産しています。

  • 設立:1964年
  • 本社:長野県
  • 売上高:729億円
  • 従業員数:1,374人
  • 平均年齢:39歳

雪国まいたけ

神明ホールディングスの子会社。

マイタケ、しめじ、エリンギなどを生産しています。

  • 設立:1983年7月
  • 本社:新潟県、東京都
  • 売上高:422億円
  • 従業員数:1,079人
  • 平均年齢:41歳

オイシックス・ラ・大地

野菜のネット販売大手。

契約農家から仕入れ、順調に顧客を増やしています。

  • 本社:東京都
  • 売上高:1,151億円
  • 従業員数:1,032人
  • 平均年齢:41歳

秋川牧園

無農薬野菜などの産直販売を行っています。

  • 設立:1979年5月25日
  • 本社:山口県
  • 売上高:70億円
  • 従業員数:303人
  • 平均年齢:44歳

農業総合研究所

農家の直売所事業。

全国のスーパーに直売所を展開しています。

  • 設立:2007年10月
  • 本社:和歌山県
  • 売上高:51億円
  • 従業員数:129人
  • 平均年齢:35歳

農業ビジネス参入企業

企業の農業参入が増えています。

農業や食品とは関係のない異業種からの参入も少なくありません。

流通大手

セブン&アイ・ホールディングスやイオンなど流通大手が農業への参入を開始しました。

販売用の野菜などを栽培し、顧客満足度を上げる農作物の生産・提供を目指しています。

カゴメ

カゴメは創業以来、かかわりの深いトマト栽培に参入し、トマトの開発・生産から販売までの独自ルートを確立しました。

培ってきた知識とノウハウを活かし業績も順調に成長しています。

  • 設立:1949年
  • 本社:愛知県、東京都
  • 売上高:95億円
  • 従業員数:2,818人
  • 平均年齢:40歳

ワタミ

外食産業から参入したワタミはメニューに使う有機農作物を生産し、差別化を図ろうとしています。

また農家を支援し、農業の発展に貢献するための事業を積極的に展開しています。

パソナグループ

人材派遣会社大手。

農業分野の新たな雇用創出を目指して参入しました。

意欲のある人が農業に参加できる環境や人材流動化のインフラ整備を進めています。

農業機械

農業機械はトラクター、コンバイン、バインダ、田植え機、自動搾乳機、動力運搬機など多くの種類があります。

国内市場は縮小傾向ですが、輸出は好調です。

農機メーカー

  • クボタ:国内最大手
  • ヤンマーホールディングス:農機大手
  • 井関農機:農機専業
  • やまびこ:小型屋外作業機械
  • 丸山製作所:農薬散布機

農業業界の人材育成

農家の後継ぎ問題がある一方で、新規参入者は増加傾向にあります。

農業生産法人への就職や農業経営を始める人が増えています。

農業と別の仕事を組み合わせたり、1日単位の農業アルバイトなど農業との関わり方が多様化しています。

就農準備校

全国にある就農準備校は、農業に興味のある人が農業の基本的な知識や技術を学べる学校です。

受講日は平日の夜や、土日に設定されていて、働きながらでも農業を学べるようなスケジュールとなっています。

さまざまなコースがあり、授業は座学と実習を組み合わせて、農業に関することが幅広く学べるようになっています。

また通学が難しい人には、Eメール塾や、農業e‐ラーニング講座も用意されています。

新・農業人フェア

「就農したいがどうすればよいかわからない」、「農業法人に就職したい」、「いずれ地方に戻って、あるいは移り住んで就農したい」など幅広い就農希望者を対象に開催される国内最大級のイベントです。

農林水産省と厚生労働省が後援しています。

会場では来場者それぞれのニーズに応えられるよう、さまざまなコーナーが設置されています。

パソナグループ農業プロジェクト

日本全国で就農支援事業を展開、新たな雇用創造の取り組みを行い、農業の可能性を拡大しています。

  • パソナチャレンジファーム
  • 就農支援事業
  • アグリベンチャー大学校

マイナビ農業

農業に関わる多彩な情報を発信する農業の総合情報サイトです。

農業の最新ニュースや取り組みの紹介、農業に特化したイベントなどを行っています。

まとめ

農業に関する課題は多く、厳しい状況ではありますが、農業への関心は高まり、新規参入者は増加傾向です。

ITで生産性を向上させる「スマート農業」の普及など、農業の衰退に歯止めをかける経営効率化が進められています。

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【参考】
・農林水産省ウェブサイト
・総務省「日本標準産業分類」
・各企業ウェブサイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』