キーワード解説
固定残業代
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して、定額で支払われる割増賃金のことです。
毎月の固定給に定額の残業代を含めて、一定時間の残業時間までは定額の賃金が支給されます。
定額の残業代が決まっていても、実際の残業時間がみなし残業時間を上回ったときには、差額の残業代が支払われなければなりません。
固定残業代は、「固定残業手当」「営業手当」「業務手当」など名称に関係なく、割増賃金の支給に代えて支払われるものをいいます。
固定残業代を除いた賃金は最低賃金の額を上回っていなければなりません。
給与を固定化することで、予算や支払い事務を効率化したり、一定時間内に仕事を終える習慣をつけることで生産性を向上させる目的などで導入されています。
固定残業代は企業側にとって効率化などのメリットがある一方で、求職者側からすると基本給が高額であると誤解する可能性があり、求人票の固定残業代を含めた賃金表示が原因でトラブルも起こっています。
ハローワークや民間職業紹介を利用した人の求人条件と採用条件が異なっていた不満で一番多いのは、「賃金に関すること(固定残業代を含む)」です。
固定残業代をめぐるトラブルを予防するため、固定残業代を採用する場合は、募集要項や求人票の段階で固定残業代の内容について明示をしっかりと行うよう、厚生労働省は事業主等への周知を行っています。
若者雇用促進法に基づく指針では、「固定残業代」について適切な表示をするように定めています。
募集要項や求人票に明示する必要がある内容
若者が応募する可能性のある募集や求人について、固定残業代を採用する場合には、以下の内容を明示する必要があります。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業代を超える時間外労働、
休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払うこと
固定残業代制の導入
固定残業代の支給制度を導入する場合には、就業規則や雇用契約書などに残業手当が定額払いであることや、何時間分の固定残業となるのかを明記することが必要とされています。
固定残業代に相当する残業時間や金額、その時間を超えて残業をした場合には、その超過分を別途支払う必要があり、そのことも明記する必要があります。
基本給を残業代込みの金額にして、超過分の残業代を支払わず、定額分のみの支給とすることは認められません。
また、固定残業代が残業20時間分と定めた場合に、その月の実際の残業が10時間だったからといって、翌月に残りの10時間分を繰り越すことはできません。
固定残業代制は、労働基準法に定めがあるわけではありませんが、一定の内容が守られていれば、適法だと考えられています。
基本給や他の手当と固定残業代が明確に区別できること
基本給のなかに残業代が含まれるのではなく、基本給や他の手当と固定残業代が明確に区別できなければなりません。
時間外割増賃金の代わりであること
固定残業代が時間外割増賃金の代わりであるということが明確になっていて、社員にも周知されていなければなりません。
法律の割増賃金額以上であること
固定残業代は、法律どおりに計算した割増賃金の額を上回った手当額になっている必要があります。
超過分の差額を支給すること
設定した固定残業代に相当する労働時間を超える残業した場合には、超えた分に相当する差額の割増賃金が別途支払われなければなりません。
例えば、30時間分の固定残業代を支払うとしていた場合、実際には35時間の時間外労働を行ったとしたら、超過した5時間分の割増賃金を追加して支払う必要があります。
固定額の設定(時間外労働の上限)
固定残業代を何時間分の時間外労働の割増賃金として設定するかについては、企業の自由ですが、36協定を締結した際の1ヵ月の時間外労働の上限に準じることが望ましいと考えられます。
参考:厚生労働省ウェブサイト