キーワード解説
家族手当とは
家族手当とは、配偶者や子どもなど扶養家族のいる従業員に対して、基本給とは別に支払われる手当のことです。
企業によって「配偶者手当」、「扶養手当」など実際の手当の名称はさまざまです。
民間企業の約8割に家族手当制度があり、配偶者に家族手当を支給している事業所は全体の6割を超えています。
男女同一賃金を定める労働基準法により「家族手当」についても支給にあたって、男女で異なる取り扱いをしてはならないとされています。
家族手当は、支給基準が明確に定められている場合には、企業に支払義務があり、労働基準法上の賃金になります。
家族手当以外にも、手当には家族状況や福利厚生、職務、資格、成績などに応じて支払われる住宅手当、別居手当、食事手当、通勤手当、営業手当などがあります。
家族手当は、職務や能力、成果に直接関係のない生活補助費としての典型的な手当といえます。
一般的に、月給は基本給と諸手当とで構成されています。
近年、成果重視の人事評価制度の導入などとともに見直しが進められ、家族手当を基本給に吸収して廃止したり、縮小する企業が目立つようになっています。
家族手当だけでなく、通勤手当以外の手当を廃止する企業も多くなっています。
大企業では子育て世帯への支援を厚くする動きから、配偶者手当を子ども手当などへ振り替える流れもあります。
配偶者手当を含めた賃金制度を見直すには、従業員の合意なしに不利益変更をすることができません。
法定手当
法定手当とは、法律によって支給が定められている手当のことです。
時間外労働、休日出勤、深夜労働に対して支払われる残業手当、休日手当、深夜手当(割増賃金)は、働いた時間について必ず支払われなければなりません。
賃金に含まれる手当ですが、家族手当などの手当とは性質が異なります。
生活補助手当
生活補助手当とは、職務内容とは直接関係のない生活費を補うような手当のことです。
家族手当、住宅手当、別居手当、食事手当、通勤手当など、家族状況や福利厚生を考慮して支給を決めることができます。
労働の対償としてではなく、従業員の福利厚生のために支給するものは賃金ではありませんが、支給条件や金額が就業規則や労働協約、労働契約で明確にされていれば賃金に該当します。
通勤手当
通勤手当とは、従業員が通勤するためにかかる費用、交通費の全部または一部を賃金として支給する手当のことです。
通勤手当の支給額については、
「自宅から勤務先へ通勤する最短距離の公共交通機関を利用した場合の実費の全額(一部)支給」
などと定められます。
他の生活補助手当は廃止される傾向ですが、通勤手当は最も実施率の高い手当のひとつです。
除外賃金
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当は、労働と直接的な関係がなく、個人的な状況に応じて支給されるものであることから、割増賃金の計算の基礎に含めない除外賃金とされています。
職務関連手当
職務関連手当とは、職務や職能、資格、成績などに応じて支給される手当のことです。
技能手当、資格手当、営業手当、宿日直手当など担当する業務を評価して支給される手当や、精皆勤手当や業績手当のようなモチベーションアップのために支給される手当、法定手当などが職務関連手当に該当します。
手当の減額・廃止
手当が賃金として取り扱われている場合、手当を減額したり、廃止することは、賃金を減額するということになります。
賃金を減額することは、労働条件の不利益変更に当たるため、企業が一方的に変更することは、原則としてできません。
賃金に該当する手当を減額・廃止するには、高い必要性と合理的な理由が求められます。
- 従業員が受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の内容の相当性
・代償措置や経過措置の実施
・関連する労働条件の状況
・国内における一般的な状況等 - 労働組合等との交渉の状況 など
正社員と非正規雇用の手当
正社員とパートタイマーや契約社員などの非正規社員との間において、不合理な待遇格差は禁止されています。
特別な理由がなく、正社員のみに通勤手当を支給するという規定は、不合理な待遇格差に該当する可能性が高いといえます。
中立的な制度に向けて
パートタイマーとして働く女性には、税制、社会保障制度、配偶者の勤務先で支給される配偶者手当などを意識して、年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整する「就業調整」をしている人が少なくありません。
「就業調整」につながるような配偶者手当については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれています。
参考:厚生労働省「配偶者手当の在り方について」