キーワード解説
非正規雇用
非正規雇用とは、正規雇用(いわゆる正社員)以外の雇用形態のことを指しています。
いわゆる正社員は、企業に直接雇用され、原則としてフルタイム勤務、期間の定めのない雇用契約で働いています。
非正規雇用は、有期労働契約やパートタイム労働、労働者派遣などで働き、呼び方は「パートタイマー」、「アルバイト」、「契約社員」、「派遣社員」、「嘱託社員」など雇用形態や勤務先によりさまざまです。
非正規雇用者数は緩やかに増加し、雇用者全体の36.9%(2022年平均)を占めています。
雇用形態別では、近年はパート・アルバイトが増え、非正規雇用全体の7割となっています。
また非正規雇用は女性の比率が非常に高くなっています。
バブルの崩壊やリーマンショックなどを経験し、景気の先行きについて警戒心を強めた日本企業では、解雇が難しい正社員から非正規社員へのシフトが進みました。
非正規雇用の増加は社会問題となり、正社員との労働条件の格差が問題視されるようになりました。
正規・非正規雇用者間の労働条件の格差を是正して、同一労働同一賃金など、バランスのとれた処遇を実現することが求められるようになっています。
また非正規雇用から正社員への転換を推進するための措置として、無期転換ルールが企業に義務づけられました。
職務や労働時間、勤務地を限定して働く「限定正社員」は、その受け皿となる雇用形態として注目されています。
代表的な非正規雇用
- パートタイマー:正社員に対して1週間の所定労働時間が短い労働者
- アルバイト:臨時に雇用される労働者など
- 契約社員:契約期間に定めのある労働者
- 派遣社員:労働者派遣事業の派遣労働者
- 嘱託社員:定年後の再雇用などによる有期雇用の労働者
労働条件の違い
正規社員(いわゆる正社員)は「直接雇用」「無期雇用」「フルタイム」が基本の労働条件となっています。
雇用期間 | 労働時間 | 雇用形態 |
無期 | フルタイム | 正社員、限定正社員 |
有期 | フルタイム | 契約社員など |
無期 | 短時間 | 無期雇用のパートタイマー |
有期 | 短時間 | パートタイマー、アルバイトなど |
非正規雇用の雇用形態
- パート(48.6%)
- アルバイト(21.6%)
- 契約社員(13.5%)
- 派遣社員(7.1%)
- 嘱託社員(5.3%)
厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」(2022年)より
非正規雇用の状況
非正規雇用者は、全体に占める65歳以上の割合が高まり、若年層が占める割合は横ばいです。
正社員として働く機会がないため、非正規雇用で働いている不本意非正規雇用の割合は、非正規雇用者全体の10.3%(2022年平均)です。
非正規雇用の労働保険・社会保険
要件を満たせば非正規社員も保険に加入します。
- 雇用保険
・31日以上の雇用期間があること
・1週間の所定労働時間が20時間以上あること - 労災保険
すべての従業員が加入する - 社会保険
・加入している従業員が500人以下の要件により判断
・加入している従業員が501人以上の要件により判断
同一労働同一賃金
非正規雇用は正規雇用に比べて、賃金が低いという課題があります。
同一労働同一賃金は、同一企業内におけるいわゆる正社員と非正規雇用との間の不合理な待遇差を解消することを目指しています。
公的な就職・キャリア支援
国や地方自治体が非正規雇用から正規雇用を目指す人の就職やキャリア形成を支援しています。
- わかものハローワーク
若者を対象とした専門型のハローワーク - ジョブカフェ
地方自治体が運営する各地域の特色を活かした若者向けのサービス - トライアル雇用
常用雇用を前提として、原則3ヵ月間その企業で働いてみる制度 - 公的な職業訓練
求職者が無料で受けられる職業訓練
・公共職業訓練
・求職者支援訓練 - ジョブカード制度
正社員経験の少ない若者に対して実践的な職業訓練の機会を提供する制度 - 教育訓練給付
一定の教育訓練の受講経費の一部を雇用保険が給付する制度
非正規雇用に関する主な法令・制度
- 労働契約法
個別の労働関係の安定を図るための法律 - パートタイム・有期雇用労働法
パート、アルバイト、契約社員として働く人の雇用環境を守る法律 - 労働者派遣法
派遣労働者の保護と雇用の安定を図るための法律
【参考】
・厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題
・厚生労働省ウェブサイト
・ハローワークインターネットサービス