キーワード解説
採用選考
採用選考とは、求人募集に集まった応募者に対して行う選考のことです。
契約自由の原則から、採用の自由が認められていて、特別な制限がない限り、求人企業には、どのような人を雇い入れるか、どのような条件で雇うかについて、自由に決定することができるとされています。
しかし、雇用機会の不平等を是正するための制限は認められています。
採用を決定するにあたり、求人企業は求職者に対して、判断に必要となる情報について提出を求めることができます。
一般的な採用選考の方法として、書類(履歴書、成績証明書、職務経歴書等)の審査、筆記試験、面接試験、適性検査などがあります。
採用選考は、①応募の受付、②書類の審査、③試験の実施、④合否の判定、⑤結果の通知といった流れで行われています。
新卒採用では、エントリーから書類選考のプロセスで、人材を絞り込みます。
適性検査を最終面接前に実施する企業もありますが、人材の絞り込みとして行う企業もあります。
中途採用においては、書類審査と面接試験だけで、筆記試験を実施しない企業も多くあります。
第二新卒の採用選考では、半数程度の企業で筆記試験が実施されています。
採用は応募者からの契約の申し込みに対して、企業が承諾することで、労働契約が成立します。
内定も労働契約の成立と同じ法的効果をもつと考えられています。
採用選考の基本
採用選考にあたっては、
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力に基づいて行うこと
が基本的な考え方とされています。
公平採用選考
公正採用選考とは、企業が採用選考をする際に公正を期して行う義務のことです。
採用の自由はありますが、厚生労働省は「公平な採用選考の基本」として、職務遂行上必要な適性や能力だけを採用基準とするよう指導しています。
性別による差別的取扱いや年齢制限は禁止されているほか、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項について、面接などで質問することは避けるべきとされています。
採用自由の制限
- 職業安定法
- 雇用対策法
- 男女雇用機会均等法
- 障害者雇用促進法
- 労働組合法
採用で禁止される性別を理由とする差別
- 対象から男女のいずれかを排除すること
- 条件を男女で異なるものにすること
- 能力や資質を判断する前に方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること
- 男女いずれかを優先すること
- 情報提供について男女で異なる取り扱いをすること
採用選考の方法
採用選考では、書類選考や筆記試験などの「人材の絞り込み」とグループワークや個人面接などの「適性・能力の見極め」が行われます。
職務遂行上の必要性が認められないものを基準とする採用選考を実施することはできません。
- 身元調査などの実施
- 適性や能力に関係のない事項を含んだ応募書類の使用
- 合理的、客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
書類選考
採用選考プロセスのひとつとして面接の前に行われます。
履歴書や職務経歴書などから求人の募集内容に合致しているかを確認しています。
面接試験
中途採用では書類選考に通過した応募者に対して面接を行うのが一般的です。
求人職場(配属先)との一次面接、人事や役員との二次面接などが実施されます。
面接の主な目的は、
- 応募者の志望動機や要望、企業の採用条件・労働条件などの情報交換の場
- 会話のなかから理解力や判断力、表現力など応募書類からは判断でききない適性や能力を評価する場
- 採用基準にしたがって、応募者の適性と能力を総合的に判断する場
として実施されています。
適性検査等
中途採用では書類選考と面接で採否が決定されることが多いですが、半数程度の企業では適性検査も行われています。
本人に責任のない事項
採用選考過程で「本人に責任のない事項」を記載させたり、質問することは就職差別につながる恐れがあり不適切とされています。
- 本籍や出身地に関すること
- 家族に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
- 生活環境や家庭環境に関すること
本来自由であるべき事項
「本来自由であるべき事項」の記載や質問も不適切とされています。
- 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想に関すること
- 労働組合や学生運動など社会運動に関すること
- 購読新聞、雑誌、愛読書などに関すること
採用の通知
採用の決定は電話など口頭で通知されることもありますが、採用通知書などの文書で出されるのが一般的です。
採用予定者は誓約書を提出するなどして、入社の意思表示を明確にします。
不採用の通知
応募者が多い企業などでは、採用の決定のみを通知し、不採用の通知をしないことがありますが、一般的に不採用であっても文書で結果が通知されます。
採用の自由には、採用不採用の理由を公開しないことも含まれていると解されますので、不採用の理由を説明する義務はないと考えられています。
採用選考時の健康診断
雇い入れ時の健康診断は実施が義務づけられていますが、採用選考時の健康診断について規定したものではないので、採用選考時に採用の決定に必要のない健康診断を実施することは適切なものではありません。
予定された仕事ができるかどうかを確認するなど、合理的・客観的に必要と認められれば、応募者の同意を得て実施されることがあります。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」