企業と従業員が結ぶ雇用契約(労働契約)には、契約期間に定めのないもの(無期雇用)と契約期間が決まっているもの(有期雇用)があります。
有期雇用契約で働く契約社員やパートタイマー、アルバイトなどの人には
「本当は正社員になりたい」
「正社員は大変そうなので、このままがいい」
「やりたいことが見つかるまで、期間を決めて働きたい」
など、個別にそれぞれの理由があるでしょう。
働き方が多様化するなか、有期契約社員の働き方と辞め方を知っておきましょう。
有期契約社員の働き方
有期契約社員とは
有期契約社員とは、期間に定めのある雇用契約(労働契約)を締結している従業員のことです。
有期契約社員は、1年や6ヵ月単位の有期雇用契約を締結、または反復更新して働いています。
「契約社員」、「パートタイマー」、「アルバイト」など呼称は企業によってさまざまです。
契約社員
契約社員は法律に基づく呼称ではありませんが、正社員とは別の労働条件で契約して働く従業員のことを意味しています。
契約社員は有期雇用契約であることが一般的で、契約期間が満了すると雇用関係も終了します。
契約社員の多くは、フルタイムの勤務時間で契約しています。
1週間の所定労働時間が正社員に比べて短ければ、パートタイム従業員となります。
パートタイマー・アルバイト
パートタイマーやアルバイトは、1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される正社員に比べて短い従業員のことです。
パートタイマーやアルバイトも契約社員と同様に、多くは契約期間を定めて雇用されています。
契約社員の働き方
契約社員は企業にとって、欠かせない存在になっています。
企業の規模、業種などに関係なく、8~9割の企業で有期契約社員の採用実績があります。
高い水準で採用実績があり、既に企業の雇用形態のひとつとして確立されているといえます。
企業が有期契約社員を採用する理由
- 業務量の中長期的な変動に対応するため
- 人件費を低く抑えるため
- 経営環境の変化に対応するため
- 多様で柔軟な働き方を取り入れるため
- 正社員で雇用する前に適性を見極めるため
- 突発的な業務に対応するため
- 正社員の確保が困難であるため
- 正社員と異なる人事体系を活用するため など
有期契約社員の契約期間
実際に勤続した年数は、「3年超5年以内」がもっとも多く、一時的な雇用ではなくなっていることがわかります。
- 6ヵ月以内:2.2%
- 6ヵ月超1年以内:8.0%
- 1年超3年以内:22.0%
- 3年超5年以内:29.2%
- 5年超10年以内:20.4%
- 10年超:13.4%
(厚生労働省「令和3年有期労働契約に関する実態調査」より)
改正労働契約法
労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。
契約社員として働いていても、法改正を知らない人もいます。
自分の契約内容を確認してみましょう。
ルールのポイント
- 有期労働契約が繰返し更新されて通算5年を超えた時は、従業員の申込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる
- 「雇い止め法理」が法定化され、一定の場合には、雇い止めが認められない
- 有期雇用社員と無期雇用社員との間で、期間の定めがあることにより不合理な労働条件の相違を禁止する
法改正後の企業の対応
- 職種によって検討する
- 有期契約が更新を含めて通算5年を超えないようにする
- 通算5年を超える有期労働契約者から申込みがされた段階で無期労働契約に切り替える
- 有期労働契約者を派遣社員や請負に切り替える
- 無期労働契約の雇入れのみとする など
無期転換ルール
無期転換ルールは、有期労働契約が更新されて5年を超えたときに、期間の定めのない労働契約に転換する申し込みをすることができるルールです。
同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期労働契約者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。
例えば、契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、無期転換の申込みが可能となります。
その契約期間中であっても、次の更新以降であっても、無期転換の申込みは可能です。
有期労働契約者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立し、使用者は拒否することができないことになっています。
無期転換後のポイント
- 労働契約を有期契約から無期契約に変更
- 転換後の雇用形態は正社員とは限らない
- 労働条件は別段の定めがある部分を除き引き継がれる
限定正社員
限定正社員とは、勤務地や職務、勤務時間を限定して働く従業員のことです。
働き方の多様化が進み、導入する企業が増えています。
有期契約社員から無期雇用転換の受け皿としている企業もあります。
有期契約社員の辞め方
有期労働契約の解除
有期契約社員は、契約期間の定めがある雇用契約を結んでいますので、契約期間中の退職について問題になることがあります。
契約期間中に退職するということは、有期雇用契約を途中で解除するということです。
契約期間途中の退職
有期雇用の契約期間には、原則として最長で3年という上限があります。
1年を超える有期雇用契約の場合には、1年を経過すればいつでも退職することができます。
1年の契約期間途中の退職
1年契約で働いている途中に、退職したいという場合はどうでしょうか。
有期雇用契約の期間中であっても「やむを得ない事由」があれば退職できることになっています。
この「やむを得ない事由」とは、一般的には、契約期間満了まで待つことができないほと緊急かつ重大な理由を指します。
本人の病気やけがなどによる就業困難、近親者の介護などが想定されています。
転職が理由の契約期間途中の退職
転職は契約期間の途中に退職できる「やむを得ない事由」に該当するとはいえません。
退職を強行した場合に企業側とトラブルになるリスクはあります。
契約社員の場合であっても、「退職する場合には1ヵ月前に申し出ること」などの規定があれば、契約期間の途中でも退職することができると考えられます。
自分の契約内容を見直してみることが必要です。
企業側からの契約解除
企業側から契約期間の途中に契約を解除することは、基本的にはできません。
雇用関係を解消するということは解雇になりますので、契約期間の満了まで雇用を維持することができなと認められるほどにやむを得ない重大な理由が必要とされます。
「やむを得ない事由」に該当する場合のみ雇用契約を解除することができるということになります。
有期雇用契約を更新しない雇い止めは解雇ではありませんが、解雇と等しい判断がされることもあります。
まとめ
無期転換ルールができたからといって、有期契約社員から正社員へのルートが確立されているというわけではありません。
それでも、有期雇用契約から無期雇用契約への転換実績が7割あること、正社員として雇用する前の見極めとして有期契約社員を採用している実態があることなどから、契約社員の働きぶりは評価されていることがわかります。
同じ条件であれば、外部の人を採用するより、既に実績・能力が分かっている人を雇用転換した方が、企業にとっては安心なのです。
現在、有期雇用契約で働いていて、正社員を希望しているのであれば、しかるべきタイミングで可能性を確認してみるのがよいでしょう。
可能性がないようであれば、有期契約社員を続けるのか、20代のうちに正社員として転職するのか、決断するときだといえるでしょう。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
・ハローワークインターネットサービス