キーワード解説
退職
退職とは、企業と従業員が労働契約(雇用契約)を終了して、従業員が企業を辞めることです。
労働契約の終了は、退職と解雇に大きく分けられます。
法的には、企業からの一方的な労働契約の解約である解雇を除く、労働契約の終了を退職と定義しています。
退職の多くは、従業員側の意思表示による自己都合退職ですが、定年のように、一定の事由に該当すれば自動的に成立する退職もあります。
円満退社は、自己都合退職の場合において、職場の上司などの理解を得て、円滑な業務の引継ぎを行い、トラブルなく退職するという意味で使われています。
退職するときには、多くの手続きが必要になります。
民法上、退職は希望する日の2週間前までに意思表示をすればよいことになっていますが、多くの企業では独自のルールを定めています。
就業規則や雇用契約書など社内のルールを確認して、業務の状況や引継ぎ期間を考慮したうえで、無理のない退職スケジュールを立てることが円満退社の鍵となります。
労働契約の終了
- 期間満了
・契約期間満了:雇用契約期間が満了した労働契約の終了
・定年退職:一定の年齢に達したときの労働契約の終了 - 自己都合退職:労働者(従業員)側の意思表示による労働契約の終了
- 合意解約:使用者(企業)と労働者(従業員)の合意による労働契約の終了
- 解雇:使用者(企業)側の意思表示による労働契約の終了
・普通解雇
・整理解雇
・懲戒解雇 - 労働者の死亡:労働者(従業員)が死亡したことによる労働契約の終了
- 会社の解散等:会社の解散による労働契約の終了
退職の種類
- 自己都合退職
- 死亡退職
- 定年退職
- 休職期間満了による退職
- 雇用契約期間満了による退職
- 長期の無断欠勤による退職
退職までの流れ(例)
- 退職の意思表示(口頭)
- 退職願等の提出(文書)
- 業務の引き継ぎ
- 退職の手続き
- 退職
退職の意思表示
退職の意思表示は書面ではなく、口頭でも成立しますが、多くの企業では退職願(退職届、辞表)の提出を就業規則に定めています。
一定の事由に該当すれば自動的に退職となるケースでは、基本的に退職願などの意思表示は必要ありません。
※近年、本人に代わり退職の意思を企業に伝える退職代行のサービスが登場し、話題になっています。
退職の意思表示の撤回
退職の意思表示は、有効に撤回されれば、労働契約の終了(退職)の効果は生じないことになります。
退職の意思表示の撤回が認められるかどうかは、提出した退職願の効力が議論となります。
退職の意思表示の取り消し
退職の意思表示は、その意思表示に瑕疵(心裡留保、詐欺、強迫、錯誤)があった場合には、意思表示の取り消しや無効を主張することができます。
- 心裡留保:真意にもとづくものでない退職の意思表示
- 錯誤:思い違いをしてした退職の意思表示
- 詐欺:使用者に騙されてした退職の意思表示
- 強迫:使用者に脅されてした退職の意思表示
退職に関する法令手続き
- 健康保険・厚生年金保険の手続き
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
・健康保険(被保険者)証 - 雇用保険の手続き
・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者離職証明書
・離職票 - 給与・税金関係の手続き
・給与所得の源泉徴収票特別徴収票
・退職所得受給の申告書
退職時の債権・債務
退職時に企業との間に債権や債務がある場合には、清算する必要があります。
債権としては、未払い給与や残業代、積立金など、債務としては、前払いされた手当(通勤手当等)や貸付金などがあります。
退職金
会社を辞めるときに支給される退職手当、退職一時金などの退職金の支給は会社が任意で決めることができます。
誰でももらえるわけではなく、退職金制度のない会社も多くなっています。
退職の証明
退職した従業員が請求すれば、企業は退職証明書を交付することが義務づけられています。
退職証明書は国民健康保険の手続きなどで必要となる場合があります。
退職後の健康保険
会社で加入していた健康保険は、退職すると使えなくなります。
すぐに転職するのであれば、転職先で健康保険に加入します。
転職や再就職の予定がなければ、国民健康保険に加入するか、任意継続被保険者になるか、家族の健康保険の扶養家族になる方法があります。
健康保険に加入しないまま病院で治療を受けるようなことになると全額自己負担になります。
退職後の年金
会社員は厚生年金保険に加入していますが、退職して会社員でなくなると、自分で国民年金に加入しなければなりません。
再就職の予定があっても、空白期間ができると不都合が生じる可能性があります。
国民年金への「種別変更届」は離職日の翌日から14日以内にする必要があります。
保険料支払いの時効は2年です。
保険料の支払いが難しい人には免除制度があります。
退職後の税金
会社員の所得税や住民税は給与控除される形で納付していましたが、退職後は自分で納付する必要があります。
住民税は前年の所得に対して翌年徴収されますので、退職後に収入がなくても前年の収入があれば住民税を納付しなければなりません。
転職先で引き継ぎして給与から住民税を控除して支払うこともできます。
退職後の確定申告
退職して年内に再就職しない場合には、会社で行う年末調整ができませんので、自分で確定申告をしなければ、税金の精算ができないことになります。
確定申告で精算することで、多く払っている税金が戻ってきます。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・国税庁ウェブサイト